「出来ること」と「出来たら良いこと」の違い。起業家を目指すひとの適切な目標とは

大学の起業家育成プログラムやStartup Weekendのようなイベントに参加すると、起業を志す多くの方から「やりたいことがなかなか見つからない」という相談をよく受けます。

漠然と起業をしたいとは思っているのだけど、リスクを取ってでもチャレンジしたいことがなかなか見つからないというのです。様々なイベントに参加していて勉強もしているけど、いつまで経っても実際には起業しないというひと、みなさんの周りにもひとりはいませんか?

やりたいことが次々と見つかるひとがいるのに対して、本人の起業熱が薄いわけでもないひとがどうしてこうなってしまうのでしょうか。こうした状態に陥っている多くのひとと話しをしていると、彼らの発言にはある共通した特徴があることに気づきましたので、今日はそれを紹介しようと思います。もし自分もやりたいことが見つかってないと思ったらぜひ読んでみてください。本当にやりたいことが見つかるようになるかもしれません。

「やりたいこと」と一口に言いますが、私はこの「やりたいこと」には、「いますぐにでも出来ること」と「いますぐには出来ないこと」の2つがあると思っています。例えば、震災のボランティアでも、現地へ赴いて長期間滞在しないと出来ないことと、身近な募金箱にお金を寄付するという手段があります。定職があるひとにとって、長期間の拘束が避けられないタイプのボランティアは「いますぐには出来ないこと」ですが、少額を募金することは「いますぐにでも出来ること」です。

実は「やりたいことが見つからない」というひとたちの多くが、このやりたいことのうち「いますぐには出来ないけどやりたいこと」だけを探していることが多く、ボランティアしたいという気持ちがありながら、目の前の募金箱を探そうとはしないのです。それに対して、やりたいことが次々と見つかるひとは、ボランティアしたいという気持ちが芽生えたらすぐに募金箱を探しては寄付をするという、「いますぐにでも出来るやりたいこと」を見つけてはすぐに実行に移し、達成感を得たら、もっと貢献できることを広げ続けるというタイプのように感じます。だから見つかるひとにとっては「やりたいこと」を探すなんていうことは実に簡単なことであるのに対し、見つからないひとは永遠とこれを考え続けてしまうのです。

多くの起業家育成プログラムで「世界的な視野を持つ」や「目線を上げろ!」といった教育が行われますが、この指導を行うと多くの受講者が「いますぐには出来ないこと」ばかりを考えるようになり、「いますぐにでも出来ること」に目を向けなくなる傾向があります。さらにこうしたプログラムに表彰制度(選考やプレゼンなど)があったりすると、ほとんどのひとたちは「審査員が最も喜びそうな、いますぐには出来ないけどやりたいこと」ばかり探すようになり、本当に世界を変えることを「実現」することよりも、ひとから高く「評価」されることを目指します。

一方で、「いまできることを探して実行に移そう!」というアドバイスをする起業家育成プログラムやメンターも存在しています。例えば対象がエンジニアであれば、とにかくアプリのひとつでも作ってみよう!というアドバイスです。しかしこうした指導をしても、実際に「やりたいこと」を見いだすひとはなかなか生まれてきません。「いますぐ出来ること」を探して実行に移しているのに、なぜ「やりたいこと」が見つからないのでしょうか。

例えばエンジニアが「こんなアプリなら作れる」という「いますぐ出来ること」を見つけてくるということは、正確には「いますぐ出来る解決策」を見つけてきたいうことで、「いますぐ解決できる課題」を見つけた訳ではありません。存在しない課題に対する解決策をいくら実行に移しても誰も喜んでくれませんから、「やりたいこと」は一向に見つかりません。つまり、やりたいこと探しを、「出来ること・出来ないこと」と「課題・解決策」の2軸で整理してみるとこんなマトリクスになります。

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実現ではなく評価されることを優先してしまうタイプのひとは、いつもCDのなかから「やりたいこと」を探します。ですが、今は実現できないので成功体験へつながらず、リスクを取ってでも実行に移したいというレベルの「やりたいこと」が見つかりません。一方、いますぐできることの中でアプリ開発を選ぶタイプのひとはBばかり考えますが、成功体験を積むことができないので、やっぱり「やりたいこと」は見つかりません。しかし、本当にやりたいことが見かるひとは、Aを見つけてはBで解決するという成功体験を繰り返していき(またはBを見つけたらそのアイディアで解決できるAを見つける)、やがて自分で考える「いますぐにでも出来ること」が、多くのひとにとっては「いますぐには出来ないこと」であるという状態になるのです。

いますぐ出来る課題を見つけて解決を繰り返せば、出来なかったことが次々と「実現」していきます。こうした成功体験を積み重ねるから、やがて大きな「いますぐには出来ないけどやりたいこと」へチャレンジするモチベーションが形成されていきます。「リスクを取ってでもやりたいこと」を探すために「いますぐには出来ない」ことを考え続けるのは、「やりたいこと」を探すには逆効果なのです。

さて、そうなると「世界的な視野を持つ」や「目線を上げろ!」と言ったアドバイスは本当は良くないアドバイスなのでしょうか。多くの先輩起業家たちはここを持たないと成功できないと言いますが、それは間違っているのでしょうか。

実は、どんなアドバイスが有効かどうかは、アドバイスする対象とマッチしているかどうかが大切で、アドバイス自体には優劣はありません。「世界的な視野を持つ」や「目線を上げろ!」と言ったアドバイスが有効なのは、すでに先ほどのマトリクスでABを実行しているが、なかなかその領域がローカルに止まり続けてしまっているようなひとに対してはとても価値があります。しかし、まだABが実行できていないひとにとっては、このアドバイスは考え方をCDに陥らせてしまい、逆効果になる可能性が高いのです。価値のあるアドバイスとは、その対象者とマッチしているかどうかだけが重要です。世界に目を向けさせるというアドバイスは、起業家を「生みだす」ことにはあまり効果はなく、すでに活動している起業家を成功に導くことに効果があるという違いなのです。

やりたいことが見つからないのは、いまの自分でも解決可能な課題を実際に解決するという体験がないことが原因です。実現出来ないことをひたすら考えるのではなく、実践してその領域を広げていくことこそが最終的にやりたいことが見つかるということになりますので、とにかく解決可能な課題を見つけてください。そこから始めることこそが、あなたの起業家人生のまさしく「リーンスタートアップ」なのですから。

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