"Lean Startup Japan"

新規事業を成功させる4つのステップ

成功するリーンスタートアップ実践のポイント「顧客課題仮説の記述」

 

今日はリーンスタートアップの実践をテーマに、顧客開発モデルのポイントをご紹介しようと思います。

 

今回取り上げるのは「顧客仮説の記述」です。

 

ご存知の通り、リーンスタートアップ(顧客開発モデル)の最初の一歩は仮説の記述からです。特に顧客・ユーザの抱える課題を記述することから、すべてのリーンスタートアップは始まります。

 

この最初の一歩「課題仮説の記述」の最大のポイントはたった1つ。

 

「そのサービスによって課題を解決できると思うユーザを、具体的にターゲットしながら課題を記述すること」

です。

 

ちょっとわかり辛いと思うので、サンプルでご紹介します。

 

例えば、あなたがインターネットで写真データのプリントを注文できるサービスを検討していたとします。

このサービスを利用するであろうユーザを想定せずに課題仮説を記述した場合には、きっと以下のような記述になるのでないでしょうか。

 

「デジタルカメラが普及してもプリントして写真を保存しているユーザは多数存在し、インクジェットプリンタのランニングコストの高さや、画質クオリティ、プリントの煩雑さに不満を抱えているはずである」

 

課題仮説の記述としてしっくりきますでしょうか?

 

一方、このサービスを利用するユーザをしっかりとターゲットしながら課題の仮説を記述すると次のようになります。

 

「デジタルカメラを保有するユーザは、PCを利用しているユーザ間でのデータ受け渡しには特に問題を抱えていないが、例えば、PCを所有しない田舎の両親と子どもの写真を共有する場合などではいまだにアナログ写真を送付しないといけないという課題を抱えている。こうしたユーザの多くは自宅のインクジェットプリンタの品質や、インクにかかるコストパフォーマンス、数時間に及ぶプリント作業に不満を抱えており、年に数回しかないイベントをもっと楽にしたいと考えている」

 

 

記述内容の違い、分かりますか?

 

 

このように、ユーザをしっかりとターゲットしながら課題仮説を記述できるかどうかは、リーンスタートアップのそれ以降のプロセスにおいて、高いスピードでイテレーションを回していけるかどうかに大きく影響します。

 

ユーザをターゲットして課題仮説を書けるか否かは、以下のような意思決定に影響を及ぼします。

  1. 課題インタビューのターゲット選定
  2. 製品(ソリューション)仮説の検証速度と、MVP(必要最低限機能)の選定
  3. UVPの訴求性

 

では1つずつ見ていきましょう。

 

まずは課題インタビューのターゲット選定です。

 

ユーザをターゲットしなかった場合の課題仮説をもう一度読んでみてください。

こうした課題仮説を立てた場合、いったい誰に課題インタビューを実施すれば良いのか、即座に意思決定は可能でしょうか?

街へ出て、デジタルカメラを所有するユーザに片っ端からインタビューするにしても、ランディングページを作成してAdWordsを購入してフィードバックを得るにしても、とても「リーン」なロードマップとは言えません。

 

一方、ユーザをターゲットした課題仮説を立てた場合、課題インタビューを実施すべき場所、つまりあなたのスタートアップにとってアーリー・アダプターが集まる場所はすぐに思いつきます。

 

そうです、子どもが主役の各種イベントへ行けばいいのです。

運動会、学芸会、習い事の発表会、旅行先など、両親が熱心に子どもの写真を撮影しているイベントへ行って、その中から課題仮説で想定した「属性」、つまり田舎におじいちゃん、おばあちゃんがいる人を見つけて、仮説の内容に対して課題を抱えているかを尋ねればいいのです!

 

ターゲットするユーザを想定するだけで、ランディングページもAdWordsも必要なくなり、まだこの段階では費用は一切発生していません!

 

 

次に製品(ソリューション)仮説の検証速度です。

 

ターゲットするユーザにダイレクトに課題インタビューが実施出来ていれば、製品(ソリューション)仮説の検証は非常に簡単です。

インターネット上でプリント注文ができるWebサービスのモックアップを作成して見てもらったりする場合でも、課題仮説でターゲットしたユーザのリテラシーレベルに合わせて作成することができます。

 

またこの際に、例えば、普段は写真データをどのように管理しているかを一緒に確認出来れば、さらにMVP機能の選定にも有益な情報が収集できます。

例えば、普段はPicasaやFacebookで写真データを管理しているという事が確認出来れば、MVP機能の選定から、データストレージの提供を止めてしまうという選択も可能になってきます。

 

課題仮説の違いによる、MVP機能の違いは以下のように現れます。

最初の仮説に従うと、ユーザはプリントした写真を保存することを望んでいると仮定します。

このニーズを満たすすべてのユーザにサービスを利用してもらうために、あなたは次のような機能の搭載を検討します。

  • ユーザ登録機能
  • 写真のアップロード機能
  • アルバム管理機能
  • 写真データを保存するためのクラウド・ストレージ
  • 送付する際のアナログのアルバム選択機能
  • 写真の補正機能
  • 受注してから送付までをオートメーション化する機能
  • 決済機能
  • アカウント管理機能

 

どうですか?まだちょっと足りないと感じるかも知れません。

 

今度は「ただ、PCを持たない両親に送付だけしてくれれば良い」と考えるユーザをターゲットした場合の必要最低限機能です。

  • ユーザ登録無し(ID連携のみ)
  • DropboxやFacebookからの写真データ取り込みAPI連携(ストレージなし!)
  • 補正機能なし
  • 枚数選択なし
  • アナログのアルバムなし
  • 配送先だけを記載
  • 決済機能

 

これだけです。

 

MVPとして、開発完了までの期間と費用には雲泥の差が出ることがお分かりでしょうか?

ソリューションは極力シンプルであり、かつ必要な機能が少なくても、ターゲットするユーザが「これならいつでも利用してみたい!」と思ってくれることが何よりも大切です。

 

最後はUVPの訴求力です。

UVP(Unique Value Proposition)は、あなたが提供するサービスの差別化要因を、とても短い表現で表した言葉です。

他に存在する類似サービスと、あなたの提供するサービスがどのように異なっている(優れている)のかをユーザに訴えかける、スタートアップの成否を分かつ非常に重要なキーワードです。

UVPの選定は、ランディングページでのコンバージョンレートにも直結する、マーケティングにおける重要な要素です。

 

ユーザをターゲットしなかった仮説に従うと、ランディングページに記載する宣伝文句はこんな感じでしょうか?

 

「デジタルカメラで撮影したデータを、最高品質のアナログアルバムで作成します。100年残せるプリントサービス!」

 

しかし、適切にターゲットしたサービスでは、ランディングページには次のような言葉が並びます。

 

「もうあなたは忌々しいインクジェットプリンタと戦う必要はありません。たったの4クリックでお子様のプリント写真をご両親に3日でお届け!」

 

このようなランディングページの違いは、ユーザが「これこそ自分の抱えている課題を解決してくれるサービスだ!」と感じてくれるかに現れます。

 

一般的に、ランディングページを訪れたユーザに対して、サービスの差別化要因を訴求できるのは10秒前後です。

この間に、ユーザには「これこそ自分が探していたサービスだ!」と感じてもらわなければ、2度とそのユーザが再訪することはないかもしれません。

 

最初のUVPでは、ランディングページを訪問したユーザは「プリントされたアルバムを手にする『自分の姿』」を想像するに留まる可能性があるのに対して、ユーザをターゲットしたUVPのランディングページなら、ユーザには即座にあのインクジェットプリンタとの戦いが頭に浮かぶはずです。

 

ランディングページでユーザとエンゲージするためには、与えられた10秒間で、ユーザに課題を思い出させる必要があるのです。

 

さて、3つの項目において、ターゲットするユーザを含んで仮説をした場合としなかった場合を比べてみましたが、もしかしたらみなさんの頭にはある疑問があるかも知れません。

 

それは「そんなに最初から対象マーケットを小さくしたくはない!」ということでしょうか。

 

できればより多くのユーザに使ってもらいたいと思う気持ちはよくわかりますが、もしこの疑問を感じているとすると、もしかしたらリーンスタートアップのプロセスそのものに誤解があるのかもしれません。

 

リーンスタートアップでは、仮説の記述は1つのセグメントのユーザに対してだけ記述するのではなく、想定されるすべてのユーザセグメントに対して1枚づつ仮説を記述していきます。

そして、その1枚づつを検証していくのが、特にWebサービスの提供を検討しているスタートアップにとってもっともリーンな進め方ですし、機能はそのままで、ユーザセグメントを変えてみるというのが”Pivot”の代表的な1手段なのです。

 

マーケットを絞り込んで戦略を立てることと、ビジネスモデルをスケールさせることはトレードオフの関係ではありません。

 

どのようなビジネスモデルであっても、必ず「イノベーター」「アーリーアダプター」に最初にヒットさせることが大切なのです。

 

Facebookも、最初はハーバードの学生専門のソーシャルサービスとして展開し、後にその枠を拡張してスケールしています。

Youtubeが最初に動画投稿を提供していたのは、デートサイトの1つの機能としてで、その後にすべてのユーザに拡大しています。

Paypalはスタート当時はPDA間の送金にターゲットしたサービスでしたが、それをWebにも展開することでスケールしました。

 

いずれのケースにしても、初期の段階でイノベーターからの支援が受けられないサービスは、メインストリームの顧客への訴求力を得ることが出来ません。

最初にターゲットしたユーザから熱狂的な支持を得ることが、その後の成長へと進化するために必要な要素なのです。

 

もうすでにリーンスタートアップを開始していらっしゃる方も、もしいま手元にある課題仮説がユーザをターゲットしていないようであれば、今からでも書き直してみることをお勧めします。

「リーンスタートアップを知っている」から「リーンスタートアップが実践できる」になるためには、こうした些細な 一歩がとても大切なのです。

 

 

今月もMeetupを開催する予定ですが、今回のテーマは「どうすれば成功に繋がる仮説の記述ができるようになるか?」にしてみようかと思いますがいかがでしょうか?

Meetupの開催概要、ご参加登録は以下からお願いします。

http://www.facebook.com/event.php?eid=181525365240726

 

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