Archive for 6月, 2011

「若きアントレプレナーへの手紙(Letter to a young entrepreneur)」リーンスタートアップの重要性

月曜日, 6月 27th, 2011

現代のテック・スタートアップにとって、リーンスタートアップの必要性については、先日のMeetupの際にも「ベター」ではなく「マスト」だとお伝えしました。

今日読んでいたブログに、「若きアントレプレナーへの手紙(Letter to a young entrepreneur)」と題された、ある先輩リーンスタートアップ・メンターからの記事がありましたのでご紹介します。

 

 

John Predergastは”Blueleaf“というパーソナル・ファイナンス管理サービスの協同ファウンダーで、ボストンのLean Startup Circleのオーガナイザーでもあります。

 

彼は、これからスタートアップを開始するあるアントレプレナーから来たメール(メインはアイディアに対するフィードバック依頼)に記載されたある一節に目を止めます。そこには、そのアントレプレナーが考える「ゴール」が次のように記載されていました。

 

ゴール:

  • 1 month – コンセプトをまとめあげ、チームを探す
  • 6 months : ベータバージョンを構築する
  • 6 months – 1year : 一緒にテストを実施する企業をみつけ、プログラムを改善する

 

 

John Predergastは「市場からの学習」という、最も大切なプロセスが彼の計画の最後に記載されていることに、リーンスタートアップの必要性がまだ浸透していないことを痛感します。

いまだに多くのアントレプレナーが「フィールド・オブ・ドリームス・メソッド」(映画フィールド・オブ・ドリームスの有名なセリフ「作れよ、さらば彼は来たらん」をもじり、「作れよ、さらば顧客は来たらん」という神頼み方式で起業すること)から進化してない事を感じた彼からの返信メールは、やさしく、実に丁寧にリーンスタートアップの必要性を伝える内容になっています。

 

みなさんの周りにもいまだにフィールド・オブ・ドリームス・メソッドによってアイディアを競い合っているスタートアップの方がいらっしゃいましたら、ぜひこのブログを共有いただき、リーンスタートアップの必要性をお伝え頂ければと思います。

 

では、その返信メールの内容をご紹介します。

原文はこちら

 


 

情報共有ありがとう。

 

私はいつもアイディアよりもプロセスにフォーカスしています。なぜなら、スタートアップの初期の段階では、起業アイディアに対するクオリティは、ターゲットするユーザやマーケットからのフィードバックから得るべきだからです。

 

ゴール:初期段階のあなたのゴールは「あなたのアイディアを『誰かが』必要とするか?」に集約すべきです。テック・スタートアップにとって最も大きなリスクは「誰も使わないサービスを開発すること」です。もし私があなたの立場なら、プロセスは以下のように組み立てます。

 

1)ウィーク1:紙のプロトタイプ。基本的な画面を紙に書きだします(http://balsamiq.comのようなツールでもよいでしょう)ただしこの段階では基本コンセプトに対する肉付けのようなことはせずに、ただ頭の中にあるアイディアを書き出します。文章ではアイディアをじっくり考えたり、誰かと共有したりするのに効果的ではありません。

 

2)ウィーク2-4:あなたのアイディアが解決すると考える課題を抱えている人たちと会話をし、裏付けをします。もしこのステップを初期の段階で実施しなかったとしたら、きっとあなたはアイディアを考え続けるという、とても大きな「無駄な時間」を過ごすことになるでしょう。

 

  1. ユーザには、あなたが想定する課題に対して普段どのように対処しているかを尋ねます。ユーザがこの「課題」を自分の抱えているものだと認識しているかを確認するのです。現時点ではユーザがこの課題にどう対処し、その対処では何が足りないかや不満に感じることを聞くのです(まだ、解決するためのアイディアは彼らに伝えません)「ジョブ1」はユーザが自分で課題を抱えていると思っているかを確認して、あなたが考えるアイディアと一致するかを確認するのです。
  2. 次にユーザにアイディアを示し、ユーザが語る課題のいずれかでも解決すると思うかを聞いてみます。
  3. この作業は5人から10人ぐらいのユーザに対して繰り返し実施しますが、きっとこの作業は楽しい物にはならないでしょう。なぜなら、あなたのアイディアのほとんどはまったくの的外れであることに気づくからです。もしアイディアが有効だと考えるユーザが現れたとしたら、きっとそのユーザはあなたの作業に協力をしてくれるという幸運に恵まれる可能性もあります。
  4. (インタビュー結果から)紙のプロトタイプと、アイディアの伝え方を更新していきます。この作業は、インタビューした人たちが共鳴してくれなかったすべての項目についての「そげ落とし」が完了するまで続けます。
  5. 再度、新たな人をターゲットに、更新したプロトタイプで同じインタビューを実施します。あなたのアイディアが核心に近付いているかを確認するのです。

 

3)ウィーク5-8:アイディアを、ユーザ自身が「これで解決しそうだ」と感じるまで更新したら、ようやく何をつくるかを考え始めます。ただし、もっともシンプルで最小機能だけを搭載したバージョンで検討し、ビジネスモデルとして成立するもの(どこかの誰かがその価値に支払っても良いと考える物)として考えます。ただし、この段階でもまだ実際のサービスを作り出す必要はありません。機能が確認できるシュミレーションを作れば良いのです。

 

4)ウィーク9-10:このシュミレーションをユーザに提示し、ユーザが納得するかを確認します。反応はどうでしょうか?もし期待通りでないなら、あなたの課題に対する理解と解決手段の両面から、何を見落としているのかを探ります。ただしユーザがそれを教えてくれることはありません。彼らはだたツールを使い「良いか悪いか」を教えてくれるだけです。ユーザにそれ以上のことを期待してはいけません。なぜなら間違った方向へ導かれる可能性があるからです。

 

こうしたプロセスが、あなたのアイディアを現実の世界でいかに素早く、しかも安価にテストすることにフォーカスしているかが分かりますか?このようなプロセスを実施する際のスピード感とは、このユーザから学んだことを製品へ取り込むサイクルを高めることなのです。この製品は「紙のプロトタイプ」から開始し、データと検証が進むたびに「現実味」を帯びていくのです。

 

もしこのプロトタイプ作成が困難だとしたら、これを手伝ってくれる人、つまりウェブデザイナーの採用を考えましょう。この採用を通じて、協同創業者のオーディションとしてもいいでしょう。

 

私は、あなたが「特定できた!」と感じられた課題には解決方法は適切に提供できるけれど、それがまだ曖昧な場合(課題の設定が部分的すぎたり、大きすぎたりする場合)には、それができないことに気付くだろうと思っています。あなたの進むべき道はこうした作業なのです。

 

このアプローチによって2つのアドバンテージが得られます。1)誰も気にかけない課題に対するソリューション(サービス・製品)を作ってしまう確率の軽減。2)解決する価値がある課題を特定することによって、現実世界のデータと、その課題に取り組んでいる他の誰よりも深い洞察の両方を得ることができる。この2つは、あなたがより多くのユーザから関心を得られる確率を高め、更に先へ進むための売上げにつながるのです。

 

こうしたアプローチに関する有益な本やブログがあります。

より深い検討の為に、以下を参考にしてみてください。

www.steveblank.com

www.startuplessonslearned.com

http://market-by-numbers.com/

http://www.custdev.com/

http://www.ashmaurya.com/

 

 


 

いかがでしたでしょうか?

まさしくリーンスタートアップの基本的なプロセスを提示ししてる訳ですが、メールの返信ということで、非常に分かりやすい言葉で伝えられています。

課題・ソリューション整合を取らずに先へ進んだ時に起こってしまうこと、大きなお金をかけずに課題・ソリューション整合の検証方法、ユーザからのフィードバックの実態など、リーンスタートアップの理解に対する助言や実際のアクションまで、語りかけるように記載されています。

 

今回のケースでは、恐らく最初にメールを送信したアントレプレナーは、きっとJohn Predergastをメンターとして師事しているのかもしれません(Lean Startup Circleなどを通じて)。こうした時に、メンターからこのようなアドバイスを得ることが出来れば、多くのアントレプレナーがリーンスタートアップを実施する機会は増える気がします。

 

われわれの活動も、こうした地道な普及を続けていくことに価値があると思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

 

 

Posted in Lean Startupとは, ケーススタディ | No Comments »


ケーススタディ11 初期の成功を放棄し、スケールするためのPivotとは?Herokuの場合

水曜日, 6月 22nd, 2011

Startup Lessons Learned Conference関連記事第3弾はアプリケーション・プラットフォーム・サービスを提供している”Heroku“です。

 

ご存じの方も多いかと思いますが、Herokuは2011年1月にSalesforce.comに2億1200万ドル(約172億円!!)で買収されました。

 

Y Combinator出身のスタートアップとしては、Dropboxと共に登壇です。

 

もちろん内容はHerokuを利用方法ではありませんが、実際の活用方法はこちらに詳しく紹介されてましたのでよろしければ合わせてご覧ください。

 

 

 

 

 

PaaSサービスのパイオニア的存在のHeroku共同創業者”Adam Wiggins”が今回紹介するのは、”The Epic Pivot(大規模な事業方向転換)”と題されたスライドで、前回の記事に引き続き、スタートアップのPivot事例です。

 

ですが、今回の事例がこれまでのものと少し異なるのは、いままで紹介した事例におけるPivotは、スタートアップが成功する以前のものを中心にお伝えしてきました。しかし、今回紹介するHerokuは、大規模なPivotを行う前に、すでに1.5万人ほどのユーザを獲得し、なんと300万ドルの資金調達にも成功しています。

 

普通のスタートアップであれば、この時点ですでに「成功」と呼ばれる状態ですが、彼らは「この状態」からさらにPivotを行い、その後、冒頭でもお伝えしたとおり、salesforce.comに非常に魅力的な評価額で買収されます。

 

ではご紹介していきます。

 

Herokuは2007年7月に創業。

最初のプロトタイプはFilemaker ProのWeb版サイトで、開発期間6週間でリリースしています。

この最初のプロトタイプで数千人のアクティブ・ユーザを獲得し、順調なスタートを切ります。

 

このプロトタイプの特徴は、本格的なプログラミングが出来るように「Webエディタ機能」を搭載していました。

また、Ruby/Ruby or Railsによる開発が可能であったため、この言語のコミュニティ(アーリーアダプター)から早期の支持を得たのです。

 

2008年冬のY Combinatorに参加し、この年の2月には300万ドルの資金調達に成功します。

つまり、創業からわずか8ヶ月でサービスの開発、ユーザ獲得、資金調達を実現してしまったのです。

その時の心境をAdam Wigginsは「世界のトップにいるみたいに感じた」と言っていますが、ここまで順調に進めばそう感じるのも理解できます。

 

問題はここからです。

 

個人的な成功は感じているものの、まだプロダクト/マーケット・フィット(製品と市場ニーズの整合性)がまだ取れていないことに気づきます。

サービスはクールでスタイリッシュだし、トラクションもあり、熱心なユーザもいましたが、それでもまだ整合性は取れていないと自覚するのです。

周囲からの賞賛も、この思いを打ち消すには十分ではありませんでした。

 

そこで彼らはこの違和感からの脱却のため、問題の解決に乗り出します。

 

最初に定義した課題は、自分たちは間違ったユーザセグメントをターゲットしているのではないか?ということでした。

 

Webエディタを搭載したHerokuサービスの利用者の多くは、本格的な開発者ではありませんでした。

優秀な技術者の多くは、ウェブ上のサービスなどではなく、自分の気に入ったローカル開発環境を好むのです。

こうした学習からいくつかのAPIやコマンドラインツール機能を追加し、新たなユーザの獲得にも成功します。

 

しかし、本質的な問題(プロダクト/マーケット・フィット)はいまだに解決しないままだったのです。

 

彼らが着目したのはアプリケーションの「開発」と「制作」の違いです。

そして、両者の相違において、自分たちがどこに集中すべきなのかを考え始めます。

 

Webエディタ機能の搭載はアプリケーション開発者をターゲットしたからなのですが、多くの開発者はローカル環境を好んでいます。

そこで彼らはアプリケーションの開発ツールではなく「アプリケーションの制作ツール」に再フォーカスすることにしたのです。

 

そこからの6ヶ月間、Herokuはこれまでのサービスと並行して、このアプリケーション制作ツールの開発に着手しますがうまく行きません。

彼らは「さらなる集中」の必要性に気づきます。

 

そこでの選択は「Webエディタ機能の放棄」でした。

 

Webエディタ機能は、Herokuが最初のトラクションを得るきっかけともなった機能であり、まさにMVPの中核です。

しかし、初期の成功は彼らを「間違えた方向性にロック」することとなり、プロダクト/マーケット・フィットもしていない状態にも関わらず、その方向性で努力し続けることを強いられるようになったのです。

 

この間違いに気づいた彼らは、ついにWebエディタ機能の放棄というPivotを選択したのです。

 

この時の心境をAdam Wigginsは「心が痛むPivotだった」と表現しています。

自分たちの初期の成功の理由でもあり、もちろん自らも愛していた機能を放棄することは、ファウンダーとしては実に心が痛む選択です。

※オライリーのRailsの最初のページにHerokuのWebエディタが載っているのを見たときに「この機能を捨てよう」と決意したそうです!

こちらのリンクのLOOK INSIDEでChapter1の3ページに載ってます!

 

Webエディタを切り捨てた彼らは新たな方向性で再スタートします。

2008年9月に、3ヶ月間でほぼ新規な状態からの製品開発という計画を立てます。

そして2009年1月、新たなプラットフォーム「インスタント・ルビー・プラットフォーム」としてのサービスをローンチさせました。

 

ローンチ後、彼らの期待通りユーザ数も売上げも増加し、選択した方向性が間違いではなかったとの確信を得ることになります。

 

古いプラットフォームは”Heroku Garden”という新たなブランドとしてサービスは継続しました。

2つのプラットフォームは連携してサービス提供したのです。

 

これによって、「大規模なPivot」ではありますが、「段階的なPivot」でもあったのです。

 

このような経緯の中で彼らが学んだことは以下の通りです。

  • 初期の成功とは、人々の関心を引いただけのこと
  • その関心から市場のニーズ理解をすることと、スケールするビジネスモデルを見出さなければいけないということ
  • 初期の成功は、自分たちの会社を潰しかけていたということ
  • スタートアップが「まだ失敗していない」という状態でPivotするのはとても困難だということ
  • 正しきユーザ獲得のために(つまりプロダクト/マーケット・フィットすること)何をどうやってPivotすればいいのかを見出すこともとても困難だということ
  • そのためには「ウルトラ・ナロー・フォーカス」すること
  • 必要であれば「愛するもの」を切り捨てること

 

このような大胆なPivotを経て、今年の1月にHerokuはsalesforce.comの買収を迎えたのです。

 

 

今回のケースはいかがでしたでしょうか?

1度、課題とソリューションの整合がとれたスタートアップでも、次の課題はスケーラブルなビジネスモデルの構築です。

初期の段階である程度のユーザが獲得できたとしても、拡張性の無いユーザ・セグメントを対象としたビジネスモデルではキャズムを超えることはできません。

このように、「失敗していない状態」からのPivotはファウンダーたちを大いに悩ませるのでしょうし、特に主要な機能を切り捨てることは断腸の思いかもしれません。

 

しかし、Herokuのビジョンは「Webアプリケーションのデプロイにニューモデルを!」というものであり、Webエディタの有無に関わらず、彼らのビジョンはPivot後も継続して継承されています。

 

やはりPivotを行う際には、ファウンダーのビジョンに根ざしながらも大胆に行うことで希望が見出されるのかもしれません。

 

 

あ、余談中の余談ですが、”Heroku”という名前の由来は、”Hero”と”Haiku”の造語だそうです。。

by Hacker News

 

 

■最後にお知らせ

昨晩もご案内しましたが、明日6/23に第2回Meetupを開催します。

こちらをご覧の上、ご都合つきましたらぜひご参加ください。

会場はそれなりにキャパシティがありますので、飛び入り参加も歓迎します!

 

昨晩の記事はこちら

facebookイベントはこちらです。

 

お会いできるのを楽しみに!

 

Posted in ケーススタディ | No Comments »