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MVPとは?をもう一度考えてみた

火曜日, 1月 15th, 2013

 

2013年最初のブログは「MVP」について再考してみようかと思います。リーンスタートアップを実践している方であればお馴染みのこの言葉、理念を理解するのは簡単ですが、実に奥が深いのです。

 

というのも、年末に家の大掃除をしていた時のことなのですが、家中に散乱する「紙もの」を何とかしようと、思い切って断捨離でもしようかと考えていました。しかし、ゴミ袋に放り込む前にもう一度だけ中身を確認しておこうと見返すたびに「いつかは必要になるかも…」との思いは増し、結局、書類の束を目の前にしてなんと2時間近くもムダに過ごしていたのです。うちにはスキャナ付きの複合機(プリンタ・FAX・スキャナ+コピー)があるにも関わらずです(笑)

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そこで、考えるよりとにかく全部デジタル化してしまえ!と思い、ひたすらスキャンを始めました。しかし、作業が1時間を超えたあたりで、また作業の手を止めてしまう雑念が頭をよぎります。

 

「複合機ってまったくMVPじゃない製品だな。機能をとてもじゃないけど一言では言い表せないし、そもそもイノベーティブじゃないし…。」

 

それからは、ひたすらスキャンを進めながらも「複合機はMVP? いや、複合機のMVPは? ・・・」と雑念が頭をかすめます。

複合機はMVPと呼べるのでしょうか?複合機のように複数の機能を備える製品は、MVPとは言い難いのでしょうか?

でももしMVPでないとしたら、逆に複合機におけるMVPとはなんだったのでしょうか?

MVPは本当に定義が難しい言葉です…。

 

MVP

 

 

 

 

昨年1年間も、初めてリーンスタートアップに触れる方に限らず、これから実践をする方、すでにビジネスアイディアをまとめている方など、とても幅広いみなさんと「MVPとは?」というテーマについてお話しさせて頂きました。MVPはリーンスタートアップを進める上での重要な考え方ですし、なによりスタートアップのスピードを加速するためには、MVPの概念は欠かすことができません。書籍「リーン・スタートアップ 」では「実用最小限の製品」と訳されたMVPですが、その解釈や実践については日本だけでなく世界中で様々な解釈があります。

 

本家エリック・リースの解説は以下の通りです。

“The MVP is that version of the product that enables a full turn of the Build-Measure-Learn loop with a minimum amount of effort and the least amount of development time”

「MVPとは、(Build-Measure-Learnの)フィードバック・ループ1周を回せる『必要最低限の労力』+『最低限の実装時間』バージョンの製品」(筆者訳)

 

これでは少し解釈が難しいので、昨年、私が多くの場で利用していた説明を2つご紹介します。

1つめは、イノベーションを起こす最初の製品・サービスは、最初に使いはじめるユーザがすぐに理解できるような単純な製品であるということ

2つめは、フィードバック・ループを回すための実験手段として、MVPは製品としてではなく学習を得るための手段だと考えるということです。

 

 

1は、イノベーションを起こすような新製品・サービスはアーリーアダプターのニーズだけを汲み取ることに専念すべきで、マスマーケットの多様化されたニーズに対応する製品・サービス設計をしてはいけないということを説明しました。アーリーアダプターが製品・サービスを手にした時に、ほんの数秒でバリューと使い方が分かるような状態でなければ、決してユーザに受け入れられることはありません。これは、アントレプレナーの多くが犯してしまう、適切なソリューション案を見出しているにも関わらず、機能をそげ落とすという恐怖に撃ち勝てずにムダな機能を盛り込みすぎたために、マーケットからイノベーションが認知されないという、とても残念な結果を生み出します。失敗する新サービスの多くは「機能が足りない」ことよりも「機能が多すぎ」て、プロポジションが明確にならないことで消えていくのです。イノベーションは機能やソリューションによって認知されるのではなく、「単純明快なプロポジション」から生まれるのです

 

2は、イノベーションの形成段階では、多くの場合、実験手段として作った製品・サービスと、正式なリリースバージョンの間には明確な境界線が存在しないことを意味しています。既存のマーケットに対して新製品を投入し、確実に予測された期間で投資額を回収するという「プロジェクト」とは異なり、イノベーションを起こすために新規市場と新製品を同時に開発する段階においては、実験フェーズとローンチ・公開(販売)フェーズを分離することはまったく意味がありませんし不可能なことです。市場の存在、そして市場の拡張とともに成長するイノベーティブな製品にとって、実験と製品の区別をつけることはそもそもも困難です。例えば初期のグルーポンは機能の多くをシステム化せず、手作業で処理することによってビジネスモデルを検証しました。つまり、スタートアップ側からすれば製品・コードなしでビジネスモデルを実験したにも関わらず、マーケット側からは完全にサービスが存在しているという状態なのです。どこまでの機能を実装すれば「サービス」と呼べるのか、どこまでしか実装しなければ「実験」にとどまってしまうのかを問うこと自体、あまり意味がないのです。

 

 

では冒頭の疑問に戻りましょう。『複合機はMVPと言えるか?』です。

一般的には、プリンタ、FAX、スキャン(コピー)という複数の機能を備えた製品を指し、1980年代後半は主に企業向け、1990年代には家庭向け製品も登場した複合機ですが、これは、リーンスタートアップという概念から考えると「MVP」と言えるでしょうか?

 

 

さきほどのMVPのポイントに沿って考えてみましょう。

 

1のシンプルであるという概念から見ると、複合機の機能説明は「プリンタ+FAX+スキャン機能を標準搭載し、コピー機としても利用できます」みたいになり、あまりMVPっぽいとは言えません。そもそも単機能でないですし、多様なニーズを拾い上げる、マスマーケットに向けた製品のような印象を受けます。

2の実験手段としての概念から見た場合も、複合機はすでに実験段階にあるとは思えず、プリンタメーカーやコピー機メーカーが考えた、高機能製品仕様だと考えるのが普通ではないでしょうか。つまりイノベーティブではなく、既存製品の後続・高機能製品だと。

 

しかし、年末に私の頭に「複合機=イノベーション?=MVP?」という疑問が浮かんだのは、実は複合機は十分MVPと言えるのではないだろうか?という疑問からでした。そして、その理由は、我が家になぜ複合機が存在するのかという理由でもあったのです。

 

これまでは説明したことがありませんでしたが、MVPの判断として基準になり得るもうひとつの解釈を説明しましょう。

 

そもそも家の中でプリンタしか使っていないひとにとっては、複合機は明らかにオーバースペックです。確実に専有面積は広くなりますし、そもそもFAXなんていつ使うのか分かりません。スキャン機能はもしかしたら便利かもしれませんが、何をスキャンしたいのかはまだ分かりません。こうしたユーザ(マーケット)にとって複合機はMVPにはなり得ません。

 

しかし、プリンタも、FAXも、コピー機(スキャナ)もすべてあり、これらが狭いオフィスのスペースを占領している人にとっては、これらの設置場所は「明確な課題」であり、お金で解決できるならなんとかしたい課題です。

 

つまり「機能の数がMVPとして適切であるか?」ではなく、「紙を排出する機器が1つになる」という1つの単純明快なソリューションがMVPになり得るということなのです。

 

新規事業を考える際にリーンスタートアップを意識すると、必然的に「機能を出来るだけ削る」という方向へ向かいます。しかし、ターゲットユーザの課題を「プリンタ・FAX・コピー機が多くの場所を専有している」と捉えた場合、そのソリューションとして「では3つとも紙を出力する機器なので1つにまとめます」というソリューションはシンプルすぎるぐらいにMVPですし、逆に、オフィスにある「紙出力機器」の機能が1つでも欠けていたら、複合機としての価値を失ってしまうかもしれません。

 

このような解釈をすると、MVPとは単純に「単機能であるか」とか「製品ではなく実験手段」との解釈だけでなく、「ターゲットするアーリーアダプターの現在の環境(=代替手段)」との対比が大きなイシューになります。

現在、課題を抱えている環境や理由に照らし合わせて十分にシンプルなら、そのアイディアが複数の機能やアイディアを内包していたとしても、それは十分MVPになり得ます。大切なのはみなさんがターゲットするアーリーアダプターが、いまどのような環境に置かれ、どのような代替手段を利用しているかを見極めることです。

 

プリンタのみユーザをターゲットするなら、複合機はMVPとしてはふさわしくないどころか、いくら魅力的だと思える機能を提案しても、結局は「いいね!」と言ってもらうだけで終わってしまい、彼らは決して購買行動を起こしません。つまり課題から入るなら、ソリューションがMVPではないのでソリューションが的外れになります。

 

しかし、プリンタ、FAX、スキャナ(コピー機)の全部を利用するユーザをターゲットするなら、Wifiやソーターなどの付加機能を持たなくても、紙出力スペースが一箇所ですべてが足りる複合機は立派にMVPと言えます。

つまり”Problem/Solution Fit”を実現するMVPとは、その機能数の問題などではなく、ターゲットするアーリーアダプターの持つProblemに対して、提供するソリューションが単純明快かどうか?という問題なのです。

 

Problemの的確さは誰をターゲットするかによって変化します。同じProblemでもターゲットが違えば「自分たちのProblemではない」と判断されるということです。

 

 

フィットしているかどうかは、現在の代替手段を見れば分かります。

プリンタのみユーザを観察すれば、コピーやFAXに対する代替手段は存在せず、この人たちがアーリーアダプターになり得る課題を持っていないことはスグに分かります。

 

しかし全機器を使用するユーザを観察すれば、ラックに3つを配置したり、舌打ちしながらコンビニへしょっちゅうコピーしに行くという手段こそが代替手段であり、これを一気に解消する複合機はまさにMVPたるソリューションになるのです。

 

 

そこで今日の再定義「MVPとは」

 

『”Problem/Solution Fit”を達成するために必要な、アーリーアダプターが利用する代替手段を超える最低限の価値提供成果物(または中間成果物)』

 

としましょう!

 

 

昨年末にご紹介した、アーリーアダプター、そしてアーリーアダプターの利用する代替手段の特定を進める為に効果的なビジネスモデルキャンバス”Lean Diagram”の2回めのワークショップを開催します。

2時間半のセミナー+ワークショップで、アーリーアダプターの特徴から代替手段までを特定するためのキャンバスの活用方法が学べます。

1回めは年末に急遽開催したためご参加頂けなかった方もぜひご参加頂ければと思います。

ワークショップのお申し込みはこちらからどうぞ。

http://everevo.com/event/3314

 

 

そもそも”Lean Diagram”とは?というみなさんは”Lean Diagram”のページ及び”Lean Diagram”を紹介したブログ記事をご一読下さい。

“Lean Diagram”の詳細、データダウンロード、マニュアルのダウンロードはこちらからどうぞ。

http://leandiagram.com/

 

“Lean Diagram”を紹介したブログ記事はこちらへどうぞ

http://leanstartupjapan.org/?p=513

 

 

今年もどうぞよろしくお願いします。

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「アクティブユーザ」の本当の定義、「幸せ指標」を測定すること

火曜日, 2月 21st, 2012

 

 

前回の記事では、リーンスタートアップの実践における「測定」の重要性について、エリック・リースの翻訳記事をお伝えしました。

 

その流れで「測定」について書いてみたいのですが、今回は「なにを、どう測定するべきか」についてお伝えしようと思います。

 

スティーブ・ブランクが「アントレプレナーの教科書」のなかで、スタートアップが最初に獲得すべきユーザを「エバンジェリスト・ユーザ」と呼んでいることはすでにご紹介しました。

特定の課題を抱えていることを明確に理解しており、すぐにでもお金を払ってサービスを使いたがっているこのユーザは、サービスに満足すると自らがサービスの宣伝活動を行なってくれるという、スタートアップにとって最も重要な初期ユーザです。

 

一方、一般的には「アクティブ・ユーザ」という言葉がよく聞かれます。

登録ユーザのなかで、サービスを継続的に利用している(例えばログイン)ユーザをさしているケースが多いようです。

 

ここでひとつ考えていただきたいのですが、スタートアップがアクティブユーザ数をカウントする理由はなんでしょうか?

 

PR?

それとも自社サービスの顧客開発状況を把握し、素早くPivotするため?

 

もし後者が目的であるのなら、いますぐサービスの継続利用に基づくアクティブユーザカウントという考え方はもう一歩、進化させることをお勧めします。

なぜなら、単純なログインユーザ数のカウントでは、ユーザがそのサービスに対して本当に満足しているかどうか?の測定にはならないからです。

例えばソーシャル系サービスを提供していながら、月に1回ログインしたユーザを「アクティブ」と定義しても、サービスの状態を正しく判断する指標には成り得ないことは容易に判断できるかと思います。

 

ではなにを測定すべきでしょうか。

 

Dave McClueが提唱する”AARRR”は有名ですが、今日はもう一歩踏み込んだ測定についてご紹介したいと思います。

 

それはユーザの「幸せ指標」です。

 

サービスがいまだ進化の過程にあるスタートアップが測定すべきは、どれぐらいのユーザがあなたのサービスを利用して「幸せな状態」にあるか?を測定すべきです。

 

どのようなサービスにおいても、そのサービスに満足しているユーザであればみな一様に行う「キーアクティビティ」があるはずです。

これは、サービスに満足したユーザが口コミを行うといった行為を指しているのではなく、ユーザ自身がそのサービスを利用している際の行動のなかのことを意味しています。

 

例えばEvernoteの熱狂的なユーザであれば、単にWeb記事をクリッピングするだけでなく、サービスを最大限に活用すべく、熱心にタグ付をしたり、chromeのエクステンションをインストールしているかもしれません。

Dropboxから離れられなくなっているユーザは、複数の端末や環境から頻繁にアクセスしているかもしれません。

 

ご自身の提供するサービスの中から、こうしたコアユーザに見られる共通の行動(キーアクティビティ)を特定し、その行動を全ユーザ数のどれぐらいの割合が行なっているかを測定することによって、サービスが本当にユーザから支持されている状態であるのかどうかが判断できるようになります。

 

いつも紹介している”Running Lean“の中で、Ash Mauryaはこうした測定指標を”Customer Happiness Index”(CHI)、「ユーザの幸せ指標」と呼んでいます。

サービスをローンチさせたら、毎日ユーザの利用状況をこの”CHI”によって測定し、ユーザの幸せ状況をトラッキングしながら、なにを、どう判断し、いつ”Pivot”すべきなのかを判断します。

 

たとえばサイト訪問者数、登録アカウント数、ログイン数、キーアクティビティの3つを測定し続けた際、以下のような結果が現れたら、あなたはどのように判断し、手を打ちますか?

  • サイト訪問者数は急増
  • 登録アカウント数は微増
  • ログイン数は維持
  • キーアクティビティは微減

 

たとえばこの場合、プロモーションが功を奏して登録アカウント数が増加したにも関わらず、ランディングページのバリュープロポジションが不適切なままでユーザを取り逃がし、さらにキーアクティビティまで誘導するUX設計に問題があるという状況が想像できます。

ということは当然ながら、いまあなたが取り組むべきはさらなるプロモーションではなく、ランディングページの最適化と、キーアクティビティまでをいかにストレスなく誘導するUXを設計するかに集中スべきです。

もしキーアクティビティの測定を行わなかったとしたら、ログイン数が維持されていることを理由に、さらなるプロモーションを打ってしまうような間違いを犯すことにはならなかったでしょうか。

 

また、こうした定量的な評価は、ユーザをセグメントしながら集計することでより深い評価が可能になります。

たとえばアクセス端末種別ごとに幸せ指標を測定することで端末固有のユーザビリティの違いが見えたり、性別で分けることによってUX設計に反映したりすることができます。

 

このような指標はどんなサービスにも共通の計算式が存在するわけではなく、サービスの特性やプラットフォームなどを考慮しながらカスタマイズをしていくものです。

重要なのは、どのような測定を行うと実際のユーザの満足度を評価できるようになるかを徹底的に考えることです。

 

2/6に開催したMeetupでは「イノベーションはどこで生まれるのか」というタイトルでスライドをご紹介したのですが、多くの人は、イノベーションはアイディアの段階で生まれると思っています。

しかし実際には、あるアイディアを実行した結果の分析および分析結果からの「学び」によってイノベーションは生まれるのです。

 

リーンスタートアップのスピードを加速させ最速で成功に近づいていけるかどうかは、こうした分析力に依存します。

新規ユーザの獲得戦略ももちろん大切ですが、特にサービス初期の段階ではとにかくユーザの幸せ指標を向上させることに注力すると、後のユーザ獲得が非常に容易に進んでいくのです。

 

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【参考情報】

◆AARRRとは

AARRRとは、ユーザ・アクティビティの頭文字を意味しています。それぞれの意味は、

A:Acquisition(ユーザ初期登録)

A:Activation(アカウント有効化)

R:Retention(サービス再利用)

R:Referal(口コミ)

R:Revenue(売上)

となります。

多くの場合、Acquisition数が最も多く、次の段階へ進むユーザ数が徐々に減少することから、こうした一連の流れを「ファネル(じょうご)」と呼びます。

ユーザ初期登録したユーザ数を100とした場合、アカウント有効化を行うのが80%、再利用するのが30%、口コミをするのが10%、有料メニューを購入するのが5%といったように、一般的には、徐々にその人数は減少します。

 

一般的には、こうしたパーセンテージが変わらないことを前提として、Acquisitionの数を増やすためのプロモーションに費用を投下するというのが大企業流のやりかたです。しかし、マスへの広告などが望めないスタートアップにとっては、Activationはもちろん、RetentionやReferalを増やすことでRevenueを増加させるというのが一般的です。

しかし、まだサービス仕様が固まりきっていないときにもっとも重要になるのはユーザがサービスをどれぐらい愛しているのかという判断であり、Retentionを中心に、更に深い分析を行う必要があるのです。

 

 

 

 

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