"Lean Startup Japan"

新規事業を成功させる4つのステップ

「始められても続けられない…」 リーンスタートアップを継続する2つのヒント #1

 

 

リーンスタートアップの考えに従って事業設計を「開始」することは、ステークホルダーの合意があればすぐにでも始められます。
ですが、それを成功するまで「継続」するとなると、とてもハードルが上がります。実際、多くのチームが仮説検証に取り組んでは、ほんの数ヶ月でアイディア重視に走ったり、プロダクト開発に着手してしまったりします。

 

これはいったいなぜなのでしょうか。

 

何度インタビューを行っても、ニーズを確信するに至らないからですか?
やっぱり、とにかくまずはサービスを作って、グロースハックをガンバってユーザ数を増やしていた方が、成功に近づいているように感じるからですか?

 

わかります!

 

これってつまり、事業開発をするチームには、たとえ仮説が「反証」され続ける状態であったとしても「前へ進んでる実感」が必要だと言うことなのです。
この「評価基準」を適切にセットすることなく仮説検証を始めてしまうと、自分たちのアイディアがまったく受け入れられない状況が数週間も続いただけでモチベーションが低下し始め、まったく前へ進んでいる感じがしなくなります。

 

どうにかして自分たちが前へ進んでいることを実感したいと思う気持ちは、やがてPV、ユーザ登録数、ダウンロード数などという虚栄の評価基準(バニティーメトリクス)を見ることで代替しようとし始め、チームは誤った目標に進み始めて行き、新規事業は失敗へ向かい始めます。

高らかにリーンスタートアップへの取り組みを宣言したチームも、数ヶ月後にはWBSとガントチャートを睨みながらプロダクト開発に着手してしまうのは、こうした理由からです。

 

では、新規事業開発を行うチームには、どのような評価基準を設定してリーンスタートアップに望むべきなのでしょうか。

今回は、2回に分けて「新規事業開発チームが設定すべき評価基準」について説明したいと思います。

 

複数のひとたちがチームを組んで新規事業開発にチャレンジする場合には、基本的に2つの評価基準を用意する必要があります。

  • 1つは事業開発そのものの進み具合、つまり進捗評価基準
  • そしてもうひとつは、メンバーの事業開発への貢献、つまり人事評価基準です

 

事業開発を始めた初期段階においては、ほとんどの仮説が反証されるという失敗の連続をします。そんな状態でも、この2つをいかに適切に評価できるかこそが、チームが失敗を重ねていても「前に進んでいる実感」を持てるかどうかなのです。

 

今日はこのうちの、人事評価基準について解説します。
世界中の企業において様々な人材活用プログラムが生まれ、ザッポスのような文化の育成が賞賛されたりしていますが、世界中に存在しているほとんどすべての人事評価システムの基本構成は、2つの評価軸から構成されています。
それは、

  1. チャレンジを評価するか、堅実を評価するか
  2. 加点方式で評価するか、減点方式で評価するか

という2つの軸です。

図にしてみるとこのような形になります。

 

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書店に行けば人事評価や企業文化の創出に関する書籍が数多く並んでいますが、ほとんどの手法を整理すると、この2つの軸を適切に適用しなさいと言っています。
人事評価はこのように考え方が違うから、何をやって欲しいかによって適切な基準を設定すべき、ということです。
ザッポスの事例は、①を極端にエンハンスした文化と言えます。

 

多くの企業で採用されているのは、すでに軌道に乗っている事業のオペレーションに適した④です。もうすでに事業の成功パターンは確立しているのですから、携わるメンバーは堅実性を求められ、それが出来ないと減点されるという人事評価です。

 

新規事業に適切な人事評価軸は、当然①で、成功しそうなチャレンジをしたひとほど加点式で評価されるべきなのですが、これが実はとても運用が難しいのです。

 

経営者がどれだけ「チャレンジをしろ!」と声を張り上げても、中間管理職が減点評価ばかり繰り返して③の状態を作り出すというのが、もっとも多い失敗パターンです。そうすると、メンバーはこれ以上減点されてはたまらないので、やがてチャレンジはせずに堅実なこと(上司が気に入ること)だけをやって、④の状態へと向かいます。仮説検証で失敗を繰り返していく中で、バニティーメトリクスへ移行していくというのは、この人事評価基準の不適切さがとても大きな問題になるのです。

 

スティーブ・ジョブスは、自分自身が納得できる領域までチャレンジしない人間には「1点」もやらないという、これも極端な①人事評価を行った人物だと言えます。部下が②の領域で点を稼ごうとしても、無理矢理に①というReality distortion field(現実歪曲空間)へ引き戻すという、とてつもない経営を行った結果として、数多くのイノベーションを生み出したのです。

 

日本のメーカーで起こっていることはこの逆パターンです。
多くの企業では、組織全体の経営方針はトップが決めるけど、人事評価は中間管理職に丸投げされているというパターンでこの問題はよく起こります。
年頭の挨拶で社長が「我が社にとって今年はチャレンジの1年になります。諸君も気を引き締めて業務にあたって欲しい!」と言っておきながら、チャレンジに対する加点評価基準を中間管理職に示すことなく叱咤激励を繰り返すというのが典型的な失敗事例で、これはみなさんも良く耳にしているのではないでしょうか(笑)

ひとは褒められるために働いているのですから、働き方が人事評価基準に準拠していくのは当たり前なのです。

 

では、ジョブスのように方針と評価基準を両方実行するひとがいない組織で、チャレンジを加点方式で人事評価するには、どうしたら良いのでしょうか。

 

それは先ほどお話しした、もうひとつの新規事業開発評価基準「事業開発そのものの進み具合」がちゃんと適切に設定されているかどうかがカギになります。
事業そのものがどういう状態になれば「進んでいる」と言えるのかが決まっていれば、たとえレベニューが生まれていない状態であったとしても、人事評価で「加点」することは可能です。

 

次回は、新規事業に取り組むチームは、どのようにしたら「事業開発そのものの進み具合」を適切に設定できるかについて解説したいと思います。

 

ぜんぜん「ストーミング」しないブレストを劇的に改善する!

 

仕事で多くのブレインストーミングに参加しますが、本当にブレインがストーミングしたところを見ることは非常にレアです(笑)

 

「アイディアの否定はしない」「Yes, andでひとのアイディアに乗っかる」「適度な人数・時間」など最低限のルールは準拠しているのですが、出てくるアイディアは予想された範囲内で、ぜんぜん「発散」しきれません。こうした状況はきっとみなさんの職場でも起こっているのではないでしょうか。

 

ルールは守っているにも関わらず、まったく発散できない理由はなんでしょうか。

 

ファシリテーターが上手にアイスブレイクできないから? そもそも参加者のクリエイティビティが少ない? 原因は様々挙げられますが、実はほとんどのケースで起きているのは、主催者がどのようなアイディアを期待しているかが見抜かれていることが原因です。参加者はブレストのテーマから主催者の意図を察知して、なんとか良い答えを出してあげようと思う(または出さないといけない!)がために、逆に参加者の想像の範囲を超えるようなアイディアは一切出てこなくなっているのです。つまりブレストと言いながら、すでに普通のお仕事と変わらない状況がになっていると言っても良い状況です。

 

事例でご紹介しましょう。

 

みなさんはスマートフォンの「ボイスレコーダー・アプリ」の技術を使った新製品・新サービスを考える担当者だったとします。良くある失敗は、そのまま「ボイスレコーダーの技術を活用した新たらしい製品を考えてください」とテーマ設定してブレストを開催することです。こうしたテーマ設定では、参加者は一生懸命ボイスレコーダーとスマホの機能を見つめて、足したり掛け合わせたりしながらアイディアを考えます。

 

しかし、期待されているアイディアは「これまでにない画期的なボイスレコーダー」だろうと参加者が自ら「制限」を書けた瞬間に、せいぜい「録音した音声を、遠隔地のひとへボイス通知する」などという「スマホかけるボイス」なら誰でも思いつきそうなアイディアだけが出てきて終わってしまうのです。この程度ではブレインがストーミングしたとはとても言えません。むしろオズボーンのリストなどを使って担当者がひとりでアイディアを考えていた方がよほど効率的です。

 

こうした事態を、ファシリテーターやメンバーを入れ替えることなく、劇的に改善する方法があります。

それは、ブレストテーマを徹底的に「抽象化」するのです。

 

例えばボイスレコーダーには「ボーズ録音」という、音が途切れたら録音を中止するという機能があります。この機能に絞って、抽象化されたテーマによるブレストをやってみましょう。

 

音が途切れ途切れになるという特徴を図にすると、このようになります。

 

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この図を使ってブレストするのです!

参加者には、

「これは音の強弱を表した図です。音が大きくなったり小さくなったりしていますが、それはどんな場面だと思いますか。どんな場面でも構わないので挙げて見てください」

とだけ問いかけます。

 

すると、ファシリテーターがボイスレコーダーのアイディアを募っていると「感づいていない」参加者からは、実に多くの自由な発想が出てきます。例えば、

 

「遮断機とかのことですよね。電車が近づくと鳴って、通過すると鳴り止む」

「あー、じゃ信号のとうりゃんせとかも同じですよね。青に鳴ると鳴って、赤になると鳴り止む」

「ボクが苦しんでるのはサーバーのファンですね。負荷が上がるとウィンウィンうるさくて!負荷が下がれば鳴り止むんですが」

「夜中の赤ちゃんの泣き声とかじゃないですか。泣いたり泣き止んだりっていうイメージですが」

「だったらうちの旦那のいびきこそこの波形にピッタリ!地響きが聞こえてきたら寝返りさせてやると収まるのよ・・・」

「こないだ泊まったビジネスホテルで部屋がエレベータの近くでうるさくて!!!音に例えるとまさにこんな感じだったはず!!!」

 

 

さて、いかがですか。みなさんならこの中からいくつアイディアの種を拾うことができましたか?

例えばいびきであれば、寝るときにセットしておくと、いびきをかいたときに録音してくれるというアプリ(ずっとベストセラーです)のような発想にたどり着くかもしれません。

また、赤ちゃんの泣き声ならば、これもベストセラーとなっているベビーモニターのアプリ版かもしれません。いずれにしても「ボイスレコーダー」という枠を取り払ったからこそ生まれるアイディアです。

 

以前、アンケートを取るときにも、意図を悟られると「善意のウソ」のフィードバックが返ってくるという記事を書きましたが、ブレストも基本的には同じです。いずれのケースにしても、協力者からいかに「悟られない」ように抽象化するかが最大のポイントです。この作業さえ上手くいってしまえば、参加者のタイプを変えながら繰り返しブレストを実施することで、いつかは飛躍した素晴らしいアイディアにたどり着くことが出来るのです。

このようなブレストが出来るようになるには、実際に体験するのがベストです!

今週末に開催されるStartup Weekendは、久しぶりの「テーマ・イベント」です。今回は「パーソナル・クラウド」というテーマで飛躍したアイディアを創出します。

 

わたしもコーチとして参加しますので、ご希望があれば上記のような抽象化作業のコツについてもアドバイスしようかと思います。アイディアを形にしたいと思う起業家思考の方のみならず、大企業の新規事業開発をブレストでブレイクスルーをしたい方にとっても最高の体験になるかと思います。

 

良いアイディアで優勝すれば賞品(50万円相当!)も出るイベントですので、すでにアイディアをお持ちの方だけでなく、ブレストで良いアイディアをひねり出さなければならないというミッションをお持ちの方はぜひ参加してみてください。今までには体験したことのない「Eureka!」に出会えるかもしれません。

 

イベント詳細とお申し込みはこちらから

http://startupweekend.jp/swtokyo-personal-cloud/

 

 

いずれにしても、ユーザや参加車から有意義なフィードバックを得ようとしたら、

1.ゼッタイにバイアスをかけない

2.ゼッタイに意図を悟られない

を守ってみてください。必ずこれまでの成果から大きく改善するはずです。